『取材・執筆・推敲ーー書く人の教科書』
本書は「ライターの教科書」というコンセプトの下、執筆された。より正確に言うなら「もしもぼくが『ライターの学校』をつくるとしたら、こんな教科書がほしい」を出発点とする本である。
書くことを職業としている人はもちろん、これからそういう職業に就きたいと思っている人や、我流で書いている人、文章を発信している人に激しくオススメしたい本。
お恥ずかしい話なんですが、私がこの本を読んだきっかけは、速く書けるようになりたいからだったのですが、そういうことが解決できる本じゃないんです。
小手先のテクニックではなく、書くことの本質が書かれています。
鍛えるべきは「書く力」ではない。まずは「読む力」を鍛えてこそ、すぐれたライターたりえるのだと。
小手先の表現テクニックを学ぶよりも先に、まずは「読者としての自分」を鍛えていこう。本を、映画を、人を、世界を、常に読む人であろう。あなたの原稿がつまらないとしたら、それは「書き手としてのあなた」が悪いのではなく、「読者としてのあなた」が甘いのだ。
この時点ですでに「ほんとそれ!」って思うのですが、ここはまだ第1章の序盤の序盤。
毎ページ、線を引きたくなる部分があり、あまりにも線を引きすぎたので、この本を読んでいる途中でペンがつかなくなりました。
普段、本には線を引かないのですが、この本に関しては「ここは後から読み返したい!」と思うところだらけで、線と付箋がいっぱいです。
また、
「書きたい!」にあふれていたはずの気持ちが、「早く終わりたい!」に傾き、後半に行くにしたがって詰めが甘くなる。
わかりにくい文章とは、書き手自身が「わかっていない」文章なのだ。
文章にとっての贅肉とはなにか? ひとつは「かさ増し」である。
仕事で文章を書いたことのある人なら、どれも経験したことがあるんじゃないかと思います。あぁ、耳が痛い…
ちなみに、文字数が足りなくて「かさ増し」しなくてはならない場合は、
本来であれば原稿の構成自体を組みなおす必要がある。シーンを足し、シークエンスを足し、具体的にはエピソードや視点を足していくことによって、全体を再構成する必要がある。
だそうです。つまりやり直し。
これだけでも察していただけると思いますが、文章を速く書く方法なんて書いてあるわけがないんですよね。そもそも、速く書きたいというのは書き手(私)の都合であって、読む人には関係ないですから。
ちょっとだけガッカリしたと同時に、私が普段文章を書くときに意識していることがいくつか書かれていたりして、「じゃあ、ある程度時間がかかってもしょうがないな」と、ほっとしました。
「自宅で仕事ができるし、書くことなら誰にでもできそう」というライトな気持ちでライターになりたいと思った人がこの本を読んだとしたら、「あ、これムリだわ…」とあきらめそう。
そのくらい、書くことに対する心構えの部分からしっかりと書かれている本です。
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