『いつも「時間がない」あなたに』
時間がないことも、貧困も、肥満も、孤独も、すべて「欠乏」の問題でした。
と、最初から結論を書いてしまいましたが、時間術の本ではなく、欠乏の罠から抜け出すためのヒントが書かれている本です。
時間がない人は、仕事の締め切りに追われて焦るし、
お金がない人は、家賃の更新料の支払いのことが気になってしかたないし、
ダイエット中の人は、食べ物のことばかり考えちゃったり…
時間がない。お金がない。食べてはいけない。
そういった欠乏は、無意識のうちに人の心を占拠してしまう、というのは誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。
さらに、欠乏は洞察力の衰えや前向きな考え方ができなくなったり、処理能力のあらゆる要素を弱めることがわかっているそうです。
お金がないって、自分のがんばりが足りないってことでしょ、などと片付けられがちですが、貧困者は個人として処理能力が低いのではなく、貧困の経験が人の処理能力を奪う、と、実は逆。
処理能力が低くなってしまうので、目先の差し迫ったことにばかり注意が向けられて、前々からわかっていたことを忘れたり後回しにしてしまう、ということが起こるのだそう。
それに対する解決策が明記されているわけではないのですが、
- 人は予想外の出来事が起こることを軽視しがちなので、自分に余裕がある時に準備をしておく(まさかの時用の貯金とか、冷蔵庫の中身を健康的な食品にしておくとか)
- 欠乏は、豊かさがもとで始まるので(夏休みに時間があると思っていたら、最終日にまとめて宿題をやることになるみたいな)、細かく締め切りを設定するようにする
- 正しいことを何度も繰り返すのは難しいので、できるだけ一回限りの行動ですむようにする(給与天引きで貯金するとか、支払いを振込ではなく自動引落に変えるとか)
こんな感じで、ちらほら自分の生活に取り入れられそうなことも書かれています。
この本を一番読んでもらいたいのは、自分は貧乏を経験したことがないのに貧困対策をやることになった政治家、みたいな人かもしれません。他には、自分は太らない体質のダイエット指導者とか。
欠乏の対象を自分がいつも「足りない」と思っていることに置き換えて考えると、「そういうことか!」って実感できるようになるので。